深夜のドライブ

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その日の晩は思うところあって母が寝付いたあとにお忍びで夜のドライブに繰り出した。
先週、納車した車でどこか行きたいと思っていたのでちょうど良い機会だった。

深夜二時半に車を出して海辺を走ることにした。
今から20年程まえの新卒の頃の勤め先が途中にある見知ったルートだ。深夜の道路は車も少なく静かなものだ。途中で大型のショッピングモールの脇を通るが、この場所も小さい頃からよく知っている。土日に両親に連れられて夕方ごろに渋滞につかまりながら帰ったころを思い出した。日の落ちた道路は赤いテールランプが連なる車列で埋め尽くされ、風の谷のナウシカの王蟲の群れみたいだと父が茶化すように言っていたのを覚えている。

モールを過ぎたあたりから海辺に沿った道路に切り替わる。相変わらずの車の少なさで乗り心地の良い静かな夜道を走り抜けた。
その途中で昔の勤め先の前を通過した。退職届を出して社長と副社長に送り出された日のことを思い出した。しばらくしてお世話になった上司が脳溢血で亡くなられ、今はその人と同じ年になろうとしている自分がいる。時間の流れは早いもので、この職場の連中も同じように色んな日々を重ねてきているんだろうと思った。

そのまま車を走らせてやがて大型展示施設や高級ホテル、住宅街が立ち並ぶ「幕張」にたどり着いた。人気がないにもかかわらず煌びやかな街並みに不思議なギャップを楽しめる場所で色んな思い出がある。
初めての思い出は高校の頃。まだ埋立地が残っていた場所から冬の深夜に父と夜景の写真を撮りに来たことだ。

はじめは海辺のどこかで車を止めようかと思ったがパーキングエリアはすでに満車になっていたので海辺の散歩は断念した。昔、死んだ友人が運転する車でほかの仲間たちとここまでドライブに来たことがあったが、道がそれなりに補正されていてあの頃から少し地形は変わっていた。仕方なく高級住宅街のパーキングに車を止めて辺りを散歩することにした。幕張ベイタウンといわれるその場所は街区ごとに特徴的なデザインが目に付くマンションが立ち並び、石畳でキレイに舗装された車道に色々な店が立ち並んでいる。当然どこもシャッターを下ろしているが洒落た雑貨屋やカフェやレストランが目立つ。

かつて幕張で一度、死んだ友人と駅の傍で飯を食べてその帰りに友人が財布を無くして一緒に交番へ行ったことをふと思い出した。確かこの時は車で来ていて友人と映画を見に来た帰りだったと思う。何の映画を見たんだろう。これまでの友人と観た映画遍歴を思い返しながら歩く。

次に古い想い出は母をこの近くのホテルのケーキの食べ放題に連れてきたことだろうか。その時にチョコレートの量り売りをする店を見つけたが今もあるのだろうか。そんなことを考えながらブラブラした。

そして最近の思い出では昨年の夏に友人とこのベイタウンの傍にある公園でやっているバーベキューをしたことだろうか。帰りにこの辺りをぶらついた。この街の持つ不思議な空気感を散策しながら友達も興味を示してくれた事に小さなシンパシーを覚えた。

色んな思い出を巡らせながら深夜の街を歩いていたが未だに人を見ない。静かすぎる住宅街に本当に人がいるのだろうかと疑いたくなるような静謐さが心地よい刺激になるのが不思議だった。

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